保護者との連携:部活動顧問の心得

部活動

 著者は部活動顧問として、生徒たちの成長を支えるために保護者との関係構築に努めてきました。
保護者との良好な関係を築くことは、生徒たちが最大限の成果を出し、素晴らしい経験を積む上で欠かせない要素です。この記事では、私が大切にしてきた保護者との関係構築のポイントをご紹介します。

はじめに 〜保護者の心配事〜

 進学校で部活動の顧問を務めてきた中で、保護者の心配事には以下のようなものがあります。

部活動と受験勉強の両立

(保護者からの相談内容)
・「部活動ばかりで勉強できるのでしょうか」
・「せめて日曜日は休みにできませんか」
・「練習時間はもう少し短くならないですか」
・「その大会(行事)には参加しないといけないのでしょうか」

 進学校では学業への取り組みが重要視されるため、保護者は部活動が学力に悪影響を及ぼすのではないかと心配することがあります。進学校では受験に向けた対策として、学習時間の確保が重要視されるため、保護者は部活動と受験勉強の両立について懸念を抱くことがあります。
保護者は、我が子が適切な時間を確保し、受験に集中できるようにしたいと考えています。


運動部活動所属による怪我の心配

(保護者からの相談)
・「(運動部では)怪我をすることはないのでしょうか」
・「(運動部では)怪我が怖いです。せっかく勉強頑張って入学したのに・・・」

 保護者が我が子を進学校に入れた目的のひとつに「高度な学力を身につけ、将来の進学やキャリアに形成のために優れた教育を受ける機会を与えたい」というものがあります。
 進学校でなくとも、保護者であれば部活動中の怪我は誰もが心配することです。
「当初の目的から外れているうえに、怪我までしてほしくない」、「将来に支障がでるような怪我は一切してほしくない」という思いを持つ保護者もいます。

コミュニケーション不足

(保護者からの相談)
・「部活動でうちの子はいったい何をしているのでしょうか。何も教えてくれません。」
・「勉強さえしっかりしてくれれば、本人が何(部活動等)をしても構いません。」
・「成績が悪いので部活動を辞めさせて(休ませて)ください。」

 保護者は、部活動の活動内容や子どもの進歩についての情報を得ることを期待しています。顧問や子どもとのコミュニケーションが不十分だと、保護者は不安や不満を抱く可能性があります。

 逆に、まったく興味を示さない保護者もいます。「自主性に任せてます」という理由のものに、事務的な用件以外で部活動との関与が卒業まで一切なかった保護者もいました。

 また、子どもは部活動に意欲的なのですが、「(怪我が怖いので)子どもに部活動はさせません」、「成績が下がった時は、部活動を辞めさせます」というように自身の意向を強く子どもに課す保護者もいます。

保護者との連携で心掛けること

 ここからは、部活動顧問が保護者との連携で心掛けるべきことについて挙げていきます。
 前提として、著者は部活動への参加を勧める立場をとっています。
(『進学校での部活動がもらたす効果』  https://kohanamaru.com/club_1/508/

コミュニケーションの重要性

 保護者との密なコミュニケーションを図ることは、関係構築の基本です。定期的な連絡(電話やメール、時間があれば面談)を通じて、生徒の進捗状況や活動内容を丁寧に共有し、保護者の関心や懸念に応えるよう心掛けています。子どもが学業にもしっかり取り組みながら、部活動を通じて、我が子が心身ともに成長している様子や人間関係を構築している様子が見られると、安心して子どもの活動を見守ってくれるようになり、部活動に対して理解や協力を得られます。

目標の相互理解

 まず、「部活に対する子どもの意思(目標)が最優先」であることは言うまでもありません。
 ここでは、保護者と部活動顧問の相互理解について話をすすめます。

 例えば、保護者は「子どもには学力向上を第一目標にしてほしいけど、部活動にも無理せぬ程度に取り組んでほしい」との思いがある一方で、部活動顧問が「県内トップを目指すため、毎日休まずハードな練習を課す」という方針ならば、子どもが入部した時点で、保護者と顧問にズレが生じています。
 
 入部時期には、保護者に対して部活動での取り組みや方針を明確に伝えることにより、部活動に理解を得ることが大切です。保護者との信頼関係を築けることは生徒たちの成果につなげていくことができます。長年部活動を運営するうえで保護者の協力は大きいことを実感しています。

 繰り返しになりますが、部活に取り組む子どもの意思を尊重することは大前提です。

柔軟な対応と協力の姿勢

 保護者との意見や考え方が異なる場合もありますが、教員は柔軟な対応と協力の姿勢を持つことを心掛けてましょう。入部した当初から、部活動顧問の部活動運営の方針と保護者の意向が異なっていることは多々ありえます。
 
 そんな時、顧問として「うちの部の方針はこうですから、(保護者の)意向には添えません」と最初から意向の内容を断るのではなく、保護者の懸念や要望に耳を傾け、練習時間や参加メニューを子どもや保護者と相談しながら、納得した状況で部活動を続けることができる道を模索しましょう。

 子どもが部員として活動する時間が増えると、それに伴い保護者が部活動に関わる時間も増えます。そうした中で、部活動を通しての子どもの成長を実感できるようになります。次第に保護者は子どもの意向や部の方針に理解を示してくれるようになります。

問題解決への積極的な取り組み

 部活動にはさまざまな問題や課題が生じることもあります。

(保護者からの相談)
「部活動は一生懸命なのですが、学校の成績が伸びません。」
「部活から帰ってきたら、家では全然勉強しません。」
「おとなしい子なので他の部員の皆さんと仲良くやれるか心配です。」
「スポーツなどしたことない子ですので、大会などに参加できるものなのでしょうか。」

 私は保護者との関係を築く上で、問題解決に積極的に取り組むことを心掛けています。
「私は部活動の顧問なので、成績に関しては担任に質問してください」とか「家庭の事情のことはよく分かりません」などと返答はしません。解決策の有無にかかわらず、保護者の悩みをしっかり聴き、共に解決策を模索するように心掛けます。

 保護者からの懸念や苦情に真摯に向き合い、適切な解決策を迅速に提供したり、保護者とともに考えることで、信頼関係を築くことができます。保護者との協力を通じて、生徒たちの困難を乗り越えるために最善の方法を模索しています。

部活動顧問として、技術指導だけに特化するのではなく、学校教員であることを心掛けています。

感謝の気持ちとお礼の言葉

 保護者は、大事な子どもを部活動の顧問に預けてくれています。また、子どもたちの成長を支えるために多くの時間と労力を費やしています。

 部活動に熱心な保護者は、大会時の送迎や食事の準備、懇親会の開催、日々の差し入れなど、部活動を盛り上げるために様々な協力をしてくれます。

 保護者の熱意とサポートに感謝の気持ちとお礼の言葉を忘れずに伝えることが大切です。大会で応援に来てくれた時、学校行事で来校してくれた時、部活動を見学に来てくれた時など、保護者と介する場面があったら、部員とともに感謝の気持ちとお礼の言葉を伝えましょう。

専門性の追求と信頼性の維持

部活動の顧問としては、専門性を追求し信頼性を維持することが求められます。

部活動顧問は高い専門性を持っているにこしたことはないでしょうが、なかには専門性が乏しいのに学校業務の関係で顧問を任される教員もおり、大変な苦労をしています。

 部活動は生徒たちの成長や学びの場であり、責任を持って指導することが求められます。もし専門知識に不足がある場合でも、顧問として、情報を収集し、助言やサポートを提供することで最善の指導を目指すべきです。生徒に対して責任を持って導くことは、彼らの成長に大きな影響を与えるでしょう。

部活動の顧問を務める際には、次のような心構えを持つことをおすすめします。

  1. 開放的な姿勢: 新しい知識や経験を積極的に受け入れる姿勢を持つ
  2. 学ぶ意欲: 競技や部活動について生徒と共に学ぶ意欲を持つ
  3. 共感と支援: 部員たちの努力に共感し、サポートする気持ちを持つ
  4. コミュニケーションと協力: 部員たちや他の教員と良好なコミュニケーションを取り、協力する
  5. 柔軟性と創造性: 柔軟な考え方と創造的なアプローチを持って、新しい指導法を模索する

 これらの点に意識を向けることで、部活動の顧問としての役割を果たし、生徒のみならず保護者からの信頼も得られることでしょう。


まとめ

 私は部活動の顧問として、保護者との関係を築く上でいくつかの重要な要素に注力してきました。
「コミュニケーションの重要性」、「目標の相互理解」、「柔軟な対応と協力の姿勢」、「問題解決への積極的な取り組み」、「感謝の気持ちとお礼の言葉」、そして「専門性の追求と信頼性の維持」です。

 部活動の顧問として、保護者との良好な関係を築くことは、生徒たちの成長と成功に直結します。これからも引き続き、保護者との協力と信頼関係を築きながら、生徒たちの将来をサポートしていくことを使命としていきます。

 御拝読はありがとうございました。

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